芽が出る生命力を表現したい【漆芸家 三田村雨龍さん】

江戸蒔絵赤塚派10代 三田村有純の長男として1982年、東京都武蔵野市に生まれ幼少期より漆芸家(漆を使った作品を作る芸術家のこと)として研鑽を積む。2012年頃から埼玉県比企郡小川町のアトリエで製作を始める。第74回二紀展彫刻 優賞受賞。

目次

生命の力に魅せられて

長倉正弥

それでは雨龍さん本日は貴重なお時間を頂きありがとうございます。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

生い立ち経歴からお話ください。

生まれは東京都武蔵野市、うちの家が代々漆の仕事をしていたのもあって、高校卒業してから塗りの勉強を岩手で2年間。その後富山で木彫の勉強を5年間して東京に戻ってきて武蔵野美術大学に入ったんですけど、そこで東日本大震災が起きて色々と考えることがあり、中退しました。その後三重のアポックというNPO法人で間伐材に付加価値をつけて利益を出すということやっているところで、円空仏を彫ったり、お箸教室をやったり。その後に関東に戻ってきて、三重に行く前に父と見つけた小川町のアトリエで今、仕事をします。

小川に戻られたのがおいくつぐらいの時ですか。

30前後ですね。

10年ちょっと前ですね。何故芸術家を目指されたんですか。

何となく夏休みの自由研究とか、まげわっぱをうちの父といっしょに作ってちょっとずつモノづくりの楽しさを埋め込まれ。その後は3次元というか、立体的なものを作るのが好きだったので、富山県が木彫の町で、そこで5年間弟子入りさせて貰って、木彫の技術を身に着けて、こういう三次元のものを彫ったりしながら、漆で加飾をしていくみたいなモノづくりをしているところです。

自然と漆芸家になっていたという感じだったんですね。小川町へのご縁についてというのがどういったことだったでしょうか。

父がアトリエを探していて、僕もこういう木彫の仕事をするので武蔵野の実家は狭いので、アトリエを探していたときに、見つかりました。小川町は自然があって、水があって、仕事関係の木材だったり和紙がすごい盛んで、あと有機野菜も魅力的ですし良いなと思って。そういうご縁があって今のアトリエを買って、リフォームして仕事場を使いやすいようにして、現在小川町で活動しているという感じですね。

ありがとうございます。では、作品へのこだわりについて教えて頂けますか。

生命、種だったりそういうものから芽が出る命が絡んだものが作りたくて作っています。

生命力というか、命の力というようなものでしょうか。

そういうものですね。そういうものを木彫と、小川町の和紙を活かしながら、漆も天然塗料ですし、生命が循環しているようなイメージもどこかにありつつ作品作りをしていますね。

生命というものをテーマにしていったきっかけなどありますか。

きっかけ、98年の時に中学を卒業してすぐ、ヨーロッパに1年間父の仕事の都合で一緒に旅をしていた時ですね。その時に美術館や色んなものを見つつ漆とは何かと考えたときに、自然界で循環できるというのは根本的に種から芽が出て木に育ったり、また種に戻ってというのがあるので、それを表現したいなと。

著名な芸術家の家系に生まれて

代々漆の芸術家の家系に生まれて、ある意味では特別な人生というか、そういうことについてどのように受け止められているでしょうか。

こればっかりは生まれた時からそういうあれだったので、他の人生に生まれたらどうなのか分からないんですけど、小さい時から美術館に連れていってもらったり、物を作るという機会はありました。モノ作りは嫌いではなかったのでそういう意味では楽しんで出来ているので良いのではないかなという感じですね。うちの場合は漆は使うんですけどベースの部分は好きにして良いという根本的な考えがあるので。

代々続いているということである種の責任というか、悩みなどは。

それはないかな、子供が次にやりたいと言えばそれはそれでいいですし、違うことやりたいと言えばそれは子供の人生ですし、どっかで何とかなるかなって感じで。

最後に比企出しへのメッセージお願いします。

地元の企業とコラボというか、作品を取り上げて頂いて、地元の和紙も木材も使いますし、そういう意味でまた何かコラボレーションが出来たら地元も盛り上がりますし、より楽しんでいけたらと思いますのでよろしくお願いいたします。

長倉正弥

ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

作品の紹介

ここに三つ作品が並んでいますので、それぞれどのようなコンセプトの作品であるかとか、どのように作られているかなどお話ください。

これなんかは木型をまず2つ作って、漆皮(しっぴ)という技法なんですけど牛の皮を型に合わせて1枚のやつを引っ張って固めて漆を塗り重ねて、箱になるようになっているんですけど、型を掘るところからスタートして型に合わせて搾り上げて漆を何十回も塗って漆を固めてこの形を固定して作りました。生命の種の部分をイメージした箱です。

これはデジタルシードっていう作品の一つなんですけど、コンピューターの世界がゼロと1で成り立っていると言いますか、どんどんゼロと1が並んで、それが芽が出ているというか進歩している、成長しているなって感じた時に、ゼロと1が芽として出ている作品が作りたいなと。有機野菜だとか種だとかそういうのから芽が出るというのは良く作っているんですけど、そこから現代的な作品が作りたくて。今の現代の最先端は何だろうなと思った時にゼロと1かとたどり着いて、試行錯誤しながら作っているという感じですね。

この奥の大きなお芋は二紀という彫刻の会に出した作品なんですけど、木を積層してこの大きさまで作って和紙を張って、真鍮箔とか金箔、色箔、銀箔を貼ったりしています。お芋なんですけどやっぱり芽が出る生命力を表現したくてこういう形になっています。

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