
比企地域を歩いていると、ときどき不思議な場所に出会うことがあります。
地図を頼りに進みながらも、「本当にこの先にお店があるのだろうか」と不安になるような場所。
今回ご紹介する、ときがわ町の「古民家茶屋 ほ」もそんなお店でした。
本当にこんな場所にあるの?
きっかけは、蕎麦好きの父の一言でした。
「蕎麦が食べたいな」
そこでインターネットで探し出したのが「古民家茶屋 ほ」。
しかし、実際に向かってみると、ときがわ町のメイン通りから外れた細い道の先。
看板もごく近くまで行かなければ見つからず、「誰がこんなお店を探し出せるんだろう」と思ってしまうほどです。
けれど、その分だけ目的地にたどり着いた時はまるで秘密の場所を発見したような感覚に陥りました。
築200年の古民家が紡ぐ時間
お店として使われている建物は、もともと親戚の方が所有していた古民家だそうです。
築約200年とも言われる歴史ある建物です。
開店にあたっては大規模な改修を行い、その費用は相当な金額になったそうです。
そして14年前、この場所に「古民家茶屋 ほ」が誕生しました。
店内に一歩足を踏み入れると、そこには現代の飲食店とはまったく異なる空気が流れています。
長い年月を経た梁や柱。
味わい深い調度品の数々。
どこか昔話の世界に迷い込んだような、不思議な感覚があります。
時間の流れ方そのものが違うように感じられる空間です。

息子さんのために始まった蕎麦とうどん
お店を始めるきっかけもまた印象的でした。
ご主人の息子さんはスポーツに打ち込んでおり、体づくりのために小麦や麺類について学ぶ機会があったそうです。
その流れから、ご主人は蕎麦やうどんの打ち方を習い始めました。
最初は家族のためだった学びが、やがてお店を開くことにつながる。
人生とは本当に不思議なものです。
当初は想像もしなかった場所へご縁で導かれていく。
そんな人生の面白さを感じさせてくれるエピソードでした。
「ひっそりこっそり」営業する理由
ご夫婦にお話を伺っていて特に印象に残ったのは、その営業方針でした。
テレビや雑誌から取材の依頼が来ることもあるそうですが、すべてお断りしているとのこと。
理由を尋ねると、
「ひっそりこっそりやっていますから」
と笑顔で答えてくださいました。
多くのお客様を呼び込むことが正解とされる時代にあって、この姿勢はとても新鮮に感じます。
たくさんの人に知られることよりも、自分たちらしい形でお店を続けていくこと。
その価値観が、この場所の穏やかな空気を生み出しているのかもしれません。

くるみそばに込められた豊かな味わい
今回、私と父は「くるみそば」をいただきました。
まず驚いたのは蕎麦の香り。
口に運ぶ前から、打ちたてならではの豊かな風味が感じられます。
そして、くるみのふくよかな香ばしさ。
蕎麦の繊細な香りと見事に調和し、一口ごとに満足感が広がっていきます。
派手さはありませんが、丁寧に作られたことが伝わってくる味でした。

インタビュアーのひとこと
正直なところ、これほど隠れた場所のお店をホームページで紹介してしまってよいものか少し心配になり、「掲載しても大丈夫ですか?」と確認してみました。
すると、
「大丈夫ですよ」
とのこと。
ほっと胸をなで下ろしました。
ですが、ご主人にお名前を掲載して良いか尋ねたところ、
「名前は載せないでください。だからお店の名前も『ほ』なんです」
とだけ教えてくださいました。
その先は、あえて語らない。
そんなところにも、このお店らしさを感じます。
観光地のような派手さはありません。
SNS映えを狙ったお店でもありません。
けれど、だからこそ心に残る場所があります。
「古民家茶屋 ほ」は、そんなお店でした。
知る人ぞ知る、ときがわ町の隠れ家。
まるで昔話の世界に迷い込んだような時間を味わいたい方は、ぜひ一度訪れてみてください。

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